地元愛がキーワード。地域を軸に世界を見て考える。GIAHSアカデミーの実施校・高千穂高校校長・持永一美

こんにちは、高千穂郷食べる通信編集長の佐藤です。

世界農業遺産に認定されている高千穂郷・椎葉山地域では、認定を観光や教育を中心に様々に活かそうと取り組みが行われています。

その中のひとつが、高校生を中心に展開する「GIAHSアカデミー」。部活動という形態を取りながら、地域と連携し、農林業を中心に体験をしながらの学習や、学んだことを小中高生に向けて出前授業を行うなどの取り組みを行っています。

GIAHSアカデミーは、2020年で3期目を迎え、少しずつ活動の場が広がっています。活動の中心にいるのは、県立高千穂高校の生徒たち。現在この活動は県内外の注目を集めるまでになっています。

GIAHSアカデミーを通じて教育の場はどのようになっているのかを、高千穂高等学校の持永一美校長にお話をうかがいました。

外から見た高千穂と、住んで見てわかった高千穂

— 持永先生は、校長として高千穂に赴任されたと伺っています。実際に暮らしてみての感想などを聞かせてください。

持永校長(以下、持永):私自身は都城出身で、高校教員になってからは、県内各地に赴任してきました。高千穂には出張というかたちでは来たことがあったのですが、住むのは今回が初めてです。今年で2年目になりますね。

まず来る前の印象としては、人の素直さや純朴さが印象に残っています。仕事で訪れたり、観光で訪れた際に、礼儀正しいなという感想もありますね。環境に目を向けると、冬は寒い(笑)。自然が豊かという感じでしょうか。

実際に来てみて、まわりに人の手が入っていることの多さを感じました。例えば棚田。高千穂には多くの棚田がありますが、それぞれ人の手が入っていて、それも土地の問題で、田そのものより、あぜなど手を入れなければいけないところの方が多いんじゃないかと思います。そういうところに驚いています。

地域に出ていくことで世界観が広がる教育

— 地域学習や普段の学校生活のなかで世界農業遺産の地域であるということは、教育において、どのようなメリットがありますか?

持永:1年生で林業体験をおこなっているのですが、伐採や加工などの現場を直接見ることによって知ることが多いはずです。例えば、貯木場に木は並んでいるのはみるが、どうやってここまできたのかなどは、それだけではわかりません。

林業という切り口から、山全体を見ることができるので、産業の全体像を見て、学ぶことができるようになるというように考えています。

— この地域での学習をしている生徒の活動を通して、なにか変化を感じた事はありますか?

持永:実際にGIAHSアカデミーの子たちは、農産物を作っているところに行って現場を知るわけですが、それによって「世界観が広がった」という感想を聞いています。

取材の取り組みから、農業や野菜、ひろく食べものに興味を持つようになったりですね。

そして学んだことを出前授業というかたちで小学生に話にいったりするのですが、その過程もプレゼンテーション力をつける上で大事なものになっています。

例えば、小学生にはやさしい言葉でどう言えば伝わるのかを考えていますし、農家さんへの取材などのときも、どのような質問をすれば良いかを考えるなどを通してということです。

— 生徒からの感想などで印象に残るものはありますか。

持永:「自分の気持ちを自分の言葉であらわす楽しさに気付かされた」というのなど、印象に残っていますね。

知識が身についたり、地域のことをより知ったりというのはもちろん、こういうことを通じて、自分の殻を破るような体験ができ、子どもたち自身は大きく成長しているように思います。

体験を通じて、「高千穂を宮崎の外から、日本の外から見てみたい」という子もいました。そして、地元の地域の魅力を伝えられたらとあって、この取り組みが、参加しているひとりひとりの中できっかけを生んでいるように思いますね。

自分たちの地域への誇りを

— 世界農業遺産を有する地域で、子どもたちには何を感じてほしいですか。

持永:まずは自分たちの住んでいる地域に、自信と誇りをもってほしいですね。

そして、取材から見えてきた、地域や身近なものに目を向けることによる気付きを大切にして欲しい。素朴な疑問や発見、そこからの喜びを感じてほしいですね。

そして地域を知る中で、先人たちの工夫を知り、自分たちの生活にも目を向けられるようにと思っています。

— 今後の教育において大事なポイントは何でしょうか。

持永:大事なのは地元愛ではないかと思います。グローバル社会と言われますが、地元から考えるということがキーワードになるのではないかと思います。

少子高齢化、人口減少というように、マイナスなことばかりが言われますが、地域を引き継いでいくのは、今の世代です。そしてまた次世代に引き継がれていく。そういうものだと思います。

進学や就職で離れしまっても、いずれ戻ってきて引き継ぐ、そう思えるようにすることが大事かなと思いますね。ずっと地元を気にかけているという状態が良いだろうな。

そして今の社会であれば、地方から世界に発信することもできるようになりました。だからこそ、高千穂からスタートするということもできるわけです。

地元とつながり、地元から考えられるようにしていくのが、教育の大事なことになっていくように思います。

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