「いっちゃがいっちゃが」の一言が多様性を生み人を育む

こんにちは、高千穂郷食べる通信編集長の佐藤です。今回は、GIAHS地域で学ぶ学生や、学校がこれからどのような形で世界農業遺産を様々な場面で活かすべきかをテーマにインタビューを行いこの地で働き、この地で生活をする人たちの思いをお聞きました。

今回はインタビュアーは五ヶ瀬中等教育学校の東口匡樹先生。

先生としてこの地で学びを伝える立場から「世界農業遺産を教育や生活に活かす」にはをテーマにお聞きしました。

最初は先生になるなんて思いもしなかった

プロフィール:東口匡樹 先生 

宮崎県立五ヶ瀬中等教育学校指導教諭。宮崎県都城市出身。北九州市立大学を卒業後に宮崎銀行に入社。1年で退職し、鹿児島大学に入学。その後学芸員を目指し4年間講師として勤めその後宮崎県の教職員に採用。初任地である宮崎県立宮崎北高校から、五ヶ瀬中等教育学校に赴任。カナダ留学を2年間挟み、現在に至る。

 

佐藤

先生は、小さいころから先生になりたかったんですか?

最初は銀行員になるつもりも、先生になるつもりもなかったんです。ただ文化人類学に興味を持ち始めて、大学に再度通い、学芸員になろうと思いました。ただ学芸員は、「最初教師になってから」というの知って、『じゃあ教職員ならんといかん』って先生になったんですよ(笑)。

東口先生

佐藤

そうなんですか(笑)。五ヶ瀬に赴任してきたのは希望を出されたんですか

五ヶ瀬のことはあまり知らなかったけど、いろんな先生からすごく良い場所であると聞いていました。なので僕は希望してこの五ヶ瀬中等教育学校選びました。

東口先生

佐藤

五ヶ瀬に赴任されてきて、この地を訪れた感想はどんなもんでした?

五ヶ瀬の地は想像以上の場所でした。

具体的に言うと、自然の時間を感じる事ができる場所。四季折々の時間とか、虫、鳥の声、その移り変わりの中で生きてるなぁと実感しました。宮崎に11年いたんですが、宮崎ではそれを感じる事がなくて、こっちはありすぎですね。

加えて、人のつながり。地域の人とのつながり。子供が1歳のときに五ヶ瀬に来たんですが、地域の人にはほんとに助けてもらいました。それに地域の人みんなが子供の名前を覚えてくれてて、歩いてるだけで『◯◯くん頑張ってるねー!すごいねぇ!元気してる?』って褒めてくれるんです。だから子供も安心して生活できる。みんな親戚のおじさん、おばさんのように接してくれました。

あと、僕のPTAのつながりもすごかったです、保護者同士でも。僕も保護者の中でも年上の方なんですが、「ぐっさん!ぐっさん!」って呼んでくれて(笑)地域の一員になってるなぁって感じました。

東口先生

世界農業遺産になって「ある意味」変わったことはない。

そんな五ヶ瀬で生活する先生が、世界農業遺産に認定を受けました。様々な変化のタイミングがこの地域に訪れましたが、先生は世界農業遺産に認定を受けてある意味変化を感じなかったそうです。

佐藤

先生は世界農業遺産に認定されて学校でも、生活でもなにか変化を感じました?

そうですねぇ・・・ちょっと上から目線に聞こえるかもしれないのですが、五ヶ瀬中等は26年前から総合学習をやってきました。卒業生がテーマを決めてそれぞれ研究するんですね、題材は自由で。科学、物理、更にはこの地の地域文化とかさまざまな研究をこの地でやっていたので、平成21年に赴任してきた来た時からこの地域の価値は感じていました。そして、どうやったらこれを周知できるかと、地域活性に活かせないという事で取り組みを始めていました。

東口先生

卒業生の卒論の綴が図書館に並ぶ。

それでスーパーグローバルハイスクール(以下、SGH)の申請をして認定を受けました。SGHが立ち上がって2年目に世界農業遺産になり、そういった意味では変わったというより勢いがつきましたね。この五ヶ瀬中等教育学校だけが認定されてわけじゃなくて、地域としても世界農業遺産に認められた事で、やっぱり学校だけじゃなくて地域と一緒に価値を活かして行こうとなりました。なので、変わったところはあまり感じなくて周りもガーッ動き始めた点が変わった所かなと思います

東口先生

学校も変化していきたい

佐藤

SGHの構想の中で、地域と学校が一緒になって教育に活かすなかで、東口先生のなかではGIAHS地域の中でどう活かすかせば良いか、これからの思いなどはありますか?

そうですねぇやりたい事はたくさんあるんですよねぇ。その中でもそうですねぇ・・・、文脈は変わるかもしれないんですが、学校もやっぱり変わらないといけないなぁと思ってまして。

東口先生

佐藤

おおーそれはどんな事で感じますか?

硬い話になるんですが、人が何かを学習するときに、知識が口頭であったり、教科書であったりで伝達される、これが学習であると言われてます。ただ、それがそうじゃないと、学習というのは個人個人が伝達されたものも含めて知識を構成していくのが学習だという構成主義という考えがあるのですが、それが大事だなぁと。

東口先生

佐藤

構成主義・・・例えばどういうことでしょうか?(笑)

例えば、農業をするときにこういう天気だったらこれ、ああいう場合だったらああしろって、口で教えられて一発できるようにはならないんですよ。やってみてうまくいかん、やってみてうまくいかん時に、それはなぜだろう?どうやったらうまくできるだろうか?を自分なりに考えてやってみて正解をだしますよね。そうやって知識に結びつくのが構成主義なんです。

東口先生

佐藤

おーわかりやすい!英語の単語テストをむちゃむちゃやった所で、英語がしゃべるようになるわけではないじゃないという事に似てますね。

そうなんです、本来なら学習はこっちのスタンスかなと思ってます。そんな中でこのGIAHS地域はいろんな学び方がある中で、生き残ってきた学びがあると思ってます。いろんな学び方があったなかで淘汰されて今があると。

東口先生

佐藤

例えばなにがありますか?

神楽なんか典型で、いろんな教え方があったはずなんですよ、おそらく、舞をほしゃどんが自分で練習して知識を構成したんじゃないかと。そこで右腕を上げなさいとか、細かい所まで習わないと思うんです。

東口先生

佐藤

確かにあれは見て感じての部分が多いですね。

なので、あれはまさに構成主義かなと。なのでそれが生き残っているのは一番効率のいい学習方法だと思うんです。それがこの地には残っている。神楽にしかり、用水路の掃除の仕方にしかり、農業にしかり、イノシシの猟にしかり、こんだけ残ってるのは羨ましい。市内にもないし、東京には絶対ない。

東口先生

佐藤

確かに・・・

もちろん、逆に東京とかには、最先端のスケボーの舞台があって五輪選手になったとか、プログラミングスクールがあってそこで優秀なエンジニアが生まれたとか構成主義に基づく学びはあると思うんです。それでも1000年以上続く神楽とか焼き畑とか、そういう学びを続ける事ができる場所は日本でも少ないのではないかと。なのでその構成主義に基づく学びにもっとガラッと変わるといいなと思ってます。

東口先生

佐藤

なるほどなるほど

もちろん教科書読んでテストを受けてって知識にできたらでいいんだけど、それを体験から、地に学び、天に学び、に変えていけたらと。例えばGIAHSスタディツアーなどで生徒は地域に放り込まれるわけですが、そこで生徒が変わるのを目の当たりにしました。それを見ると教員も変わると思います。GIAHS地域のパワーを学校関係者は身を持って知る、GIAHS地域を使うのが大事かなと思います。

東口先生

佐藤

なるほど・・・(修行僧が山にこもって悟りを開くみたいな感じかな)

でも、私も偉そうな事言ってますけど、ガラッと変わった人間なんですよ。

東口先生

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